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「ものや 技術 言葉や 想いを
それぞれの人が それぞれの 方法で
大きくても 小さくても いいから 残してゆく こと 」
釣りが中止になった昨日
箱根まで車を走らせて
美術館巡りに 時間を あてました。
その中でも
「箱根ガラスの森美術館」は
興味深く とても 楽しめました。
同じものを観たり 食べたりして
楽しむにしても
自分自身が 一度でも
それを 作った経験があると
観方や 味わい方が 全く違ってきますね。
実は 私は 20年ほど前
秀吉の最初のお城・長浜城や
石田三成の故郷としても知られる
滋賀県の長浜に
脳外科医として勤務していたころ
地元街興しで 創設された
長濱黒壁ガラス工房の
「ガラス大学」に週二回 通って
およそ 5年間
ガラス創り(ブロー:吹きガラス)を 学んでいました。
その関係で カラーコーディネイター
(色彩検定)の資格も習得したんですよ。
今は 勿論
ガラス創りからは 離れていますが…
ガラスの森美術館には
多くの ヴェネチアンガラスが 展示されています。
中でも レースガラスが とても
多いことが 特徴です。
16世紀 ヨーロッパ貴族の間では、
レース編みがもてはやされ
そのレース柄をガラス作品に持ち込んだのが
ヴェネチアン レースガラスで
その技法は長い間、門外不出の秘法だったそうです。
勿論 今では レースガラスの製作方法は
明らかにされ 世界中のガラス工房 工場で作られています。
その時代から 300年以上経った今、
現代のレースガラスと比較しても
この美術館に展示してある
17世紀の ヴェネチアンレースガラスの
模様は 繊細で 正確で その完成度には 驚愕します。
このレース柄は 単純に ペイントしてあるのではなく
一つ一つ 計算して創られた レース柄の素になる
ガラス棒を接着させて 板状にして
それを お皿や器になる拭きガラスの表面に
熱で接着させ
その後 空気のブローイングと コテや あて布、回転の遠心力で
器の形を 創りあげてゆくと同時に
レース柄を 湾曲 伸展させて
ガラス表面の 繊細な模様に なってゆくのです。
日本の漆塗りや金細工、織物など
伝統工芸の技術にも 計り知れない工夫や努力がなされていますが
中世ヨーロッパの職人達の
美に対するこだわりから生まれた これらの
技術は 筆舌しがたいほど 素晴らしく 感銘を受けます。
そして これら 一つ一つの作品に触れた折
今はこの世を去ってしまった
名も知らない 異国の
職人達に 想いが 馳せます。
「どんな人が どんな気持ちで このガラス 創ったのかな…」
「完成したとき どんなにか 嬉しかっただろう!?」
人は 文明の力で
地球上の どんな生き物よりも強くなったように
思えますが 生きられるのは 高々百年足らずです。
人が作った このガラスの器が 何百年 何千年
こんなふうに 存在し続けることが 出来るにも かかわらず
それを作った人は 百年もしないうちに
必ず この世から 姿を 消すことになります。
そういった意味では 人は 実は カラスよりも
はかなく 弱い 存在なんだと 思います。
しかし だからこそ
限られた“寿命”という時間のなかで
ものや 技術 言葉や 想いを
それぞれの人が それぞれの 方法で 残して
ゆくのでしょうね。
大きくても 小さくても いいから….
思いがけなく訪れた 休日、
古に作られた ヴェネチアのガラス達に触れ
そんなこと思いました。
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近藤惣一郎
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